『相談援助実習』(厚生労働省が定める実習指定施設で180時間以上)

 実践能力の高い社会福祉士になるためには、テキストを介した座学で多くの知識を習得することも大切ですが、それらを基礎にして、実習や演習科目のなかで、テキストで学んだことを社会福祉の実践に応用していく経験が不可欠です。これは、頭で学んだことを、体で覚えていくということです。
 それを実習担当教員が実習生、実習指導者(実習指定施設で実習生の指導を行う現場職員)と一体となって教育を展開していきます。
 相談援助実習では、以下の3つの狙いで教育を進めることになっています。

1)相談援助にかかる知識と技術について具体的かつ実際的に理解し実践的な技術等を体得すること
2)社会福祉士として求められる資質、技能、倫理、自己に求められる課題把握等、総合的に対応できる能力を習得すること
3)関連分野の専門職との連携のあり方及びその具体的内容を実践的に理解すること

 本協会では、これら厚生労働省が示す実習教育のねらいを踏まえつつ、
1)相談援助実習ガイドライン
2)相談援助実習指導ガイドライン
3)相談援助実習評価表
を独自に策定し、全国の社会福祉士養成校で行われる実習教育の最低基準項目を定め、本協会の会員となっている社会福祉士養成校に対してこのガイドラインに基づいた実習教育を行うことを推奨しています。また、この実習ガイドラインに基づいた学生用テキスト『社会福祉士相談援助実習第2版』(中央法規出版)を発刊し、より実践力の高い社会福祉士を養成するよう努めています。

<ダウンロード>
 『相談援助実習・実習指導ガイドライン及び評価表』

<実習関連テキスト>
・学生用:
 >>『社会福祉士相談援助実習第2版』(中央法規)
・実習担当教員用
 >>相談援助実習指導・現場実習教員テキスト第2版』(中央法規)
・現場の実習指導者用
 >>『社会福祉士実習指導者テキスト第2版』(中央法規)

<参考:北海道ブロック資料>
 >>相談援助実習統一資料集
 >>実習前コンピテンス・アセスメント(2015年度版)

『相談援助演習ガイドライン』

<ダウンロード>
 >>『相談援助演習ガイドライン』

<演習関連テキスト>

・学生用:
 >>『社会福祉士相談援助演習第2版』(中央法規)
・演習担当教員用
 >>相談援助演習教員テキスト第2版』(中央法規)

はじめに 〜ガイドライン(案)を作成した目的〜   
 社会福祉士は、人権と社会正義に則り、サービス利用者本位の質の高い福祉サービスの開発と提供に努めることによって、社会福祉の推進とサービス利用者の自己実現をめざす専門職です。公益社団法人日本社会福祉士会の倫理綱領には、知識、技術の専門性と倫理性の維持、向上は専門職の職責であることが明記されており、社会福祉士が、利用者に対する倫理責任、実践現場における倫理責任、社会に対する倫理責任、専門職としての倫理責任の4つの責任を負っていることが示されています。

 社会福祉士を養成するということは、このような職責と倫理責任を果たせる人材を養成することです。相談援助演習科目を担当する教員は、現在の社会福祉士養成教育のあり方が将来の福祉サービスの質に多大な影響を及ぼすことを十分に認識し、自分が担当する学期中だけではなく、学生が将来、専門職となった時のことまで念頭において教育に取り組まなければなりません。それが、専門職を養成する立場にある者の責任です。それと同時に教員は学生に対しても、専門職としての職責と倫理責任を果たせるようになるために主体的に学ぶ責任があるということを伝え、責任を遂行するための力をつけるための取り組みを行わねばなりません。相談援助演習は、学生と教員がそれぞれの責任を理解し、共に取り組むことが必要なのです。
 相談援助演習のための教育ガイドライン(案)は、そのような取り組みの内容と方法を検討する際に参考となるように作成しています。対象者は、大学・短大・専修学校・養成施設において「相談援助演習を担当している人」ですが、現任研修など他にも広く活用していただけると思います。本ガイドラインを、関係者間での協働や授業(研修)計画のツールとして活用してください。

相談援助演習の目的と意義
(1)総合的・包括的な理解
 社会福祉士養成カリキュラムは、多くの科目から構成されている。学生は、ソーシャルワークの(相談援助に係る)専門性を構成する価値、知識、技術について、科目ごとに分けられた状態で学習するのである。しかし、実際に社会福祉士が課題に取り組む場合には、それらを総合的に用いることが求められる。そのためには、科目の枠を超えて課題や実践について概念化し体系的に理解できるようになることが必要である。演習では、テーマや課題に焦点をあてた総合的な学習を通して、科目別に学習する事柄の関連性について気づき、総合的・包括的に理解できるようにする。

(2)専門的な実践力の習得
 専門職としての業務を遂行するためには、ソーシャルワークの価値、知識、技術について知っているだけでなく、それらを統合して実践に応用できることが必要である。講義は、知識を伝えるためには効率的・効果的な方法であるが、深い理解の促しや実践力の獲得という点では適していない。そのため演習では、具体的な課題や状況について観る・聴く・話す・書く・体験する・考える・感じる・振り返るといった能動的な活動を組み合わせることによって、自分や社会への気づきを得て理解を深め、それらを実践に応用するスキルを身につけることを目指す。

(3)相談援助実習・実習指導との相乗作用による教育効果
 社会福祉士養成において、実習は学生が現実に向き合い専門的な実践力を磨く重要な機会となるが、実習指導及び実習だけでは、その教育効果を十分に発揮することはできないだろう。実習前に行う演習は、学生の実習へのレディネスを高め、実習での学びの質を高めることができる。また、実習後も実習体験を演習のなかで活用することで、実習での学びをさらに深め、般化することができる。演習も、実習前であること、あるいは実習後であるということが、取り上げる内容についての現実感を増し、学習意欲を高めることになる。つまり、実習と演習は、双方の教育効果を相乗的に高めることができる。

相談援助演習に係る要件
社会状況が大きく変化するなかで、より高度で多様化するニーズに的確に対応できる人材を養成するために平成19年に社会福祉士及び介護福祉士法等の一部が改正された。この法律改正とあわせて、社会福祉士養成課程における教育カリキュラムの見直しが行われ、旧カリキュラムでの「社会福祉援助技術演習」呼ばれた科目が、「相談援助演習」へと変更された。
新カリキュラムにおける相談援助演習では、下記の要件を充たさなければならない。(「社会福祉士介護福祉士養成施設指定規則」、「社会福祉士介護福祉士学校指定規則」、「社会福祉に関する科目を定める省令」)

○時間数は150時間
○担当教員は、@大学(大学院及び短期大学を含む。)又はこれらに準ずる教育施設において、教授、准教授、助教又は講師として、社会福祉士の養成に係る実習又は演習の指導に関し5年以上の経験を有する者、A専修学校の専門課程の専任教員として、社会福祉士の養成に係る実習又は演習の指導に関し5年以上の経験を有する者、B社会福祉士の資格を取得した後、相談援助の業務に5年以上従事した経験を有する者、C厚生労働大臣が定める基準を満たすものとしてあらかじめ厚生労働大臣に届けられたものを終了した者その他その者に準ずるものとして厚生労働大臣が別に定める者
○教授する教員の員数は、それぞれ学生20人につき1人以上とすること。大学等では、少なくとも1人以上は専任教員を配置すること。
○少なくとも学生20人に付き一室の割合で、演習室を有すること。ただし、教育上支障がない場合は、演習室と実習指導室とは兼用することができる。